建設業のAI活用事例|工程表・見積・施工写真など業務別にできること

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「建設業でAIを使うと、実際に何ができるのか」。この記事では、その答えを業務ごとの活用事例で紹介します。

事例は2種類あります。1つは、建設業向けAI研修を行う株式会社PlanTiveが、汎用のAIで実際に試した「実演でできたこと」です。もう1つは、国内の建設会社が自社サイトで公表している取り組みです。

どちらも、うまくいった点だけを並べるつもりはありません。業務ごとに「まだ難しいこと」も書きます。自社で使うかどうかを考える材料にしてください。業務ごとの使い方は建設業のAI活用事例ページにもまとめています。

この記事で紹介する「活用事例」について

最初に、事例の読み方を整理しておきます。

  • 実演でできたこと:PlanTiveが、Claude・ChatGPT・NotebookLMといった汎用のAIで試した内容です。お客様の現場での成果ではありません。
  • 業界の公開事例:建設会社が自社のニュースリリース等で公表している内容です。出典を付けています。PlanTiveはこれらの取り組みに関わっていません。

実演の内容は、専用ソフトではなく、誰でも契約できる汎用のAIで行っています。高い専用ソフトを買う前に、手元のAIでどこまでできるかを知っておく。それがこの記事の立場です。

業務別:AIで何ができるか(実演でできたこと)

ここからは、建設会社の事務所や現場でよくある業務ごとに見ていきます。

工程表:打合せの音声からバーチャート工程表を作る

実演でできたこと:打合せの音声や文字起こしをAIに渡し、バーチャート形式の工程表をExcelで出力しました。日付の計算などには関数が入った状態で出てきます。また、音声で話しかけるだけで、6階建てビルの足場計画と工程表をまとめる実演も行いました。

まだ難しいこと:その現場ならではの段取りは、AIは知りません。搬入経路の制約や、近隣との約束事、職人さんの都合などです。最初に出てくる工程表は「たたき台」です。人が直す前提で使います。

工程表づくりの手順は工程表の作成にAIを使う研修のページで詳しく紹介しています。

見積書:図面と過去の見積から、見積書とメールの下書きまで

実演でできたこと:図面と過去の見積書をAIに読ませ、見積書の形に整えました。さらに、お客様に送るメールの下書きまで作りました。項目の並べ方や言い回しを過去の見積に合わせられるのが便利な点です。

まだ難しいこと:図面からの拾い出しや寸法の読み取りは、AIが短時間で出せても、そのまま提出できる状態にはならず、人の確認が残ります。数量は、これまでどおり人が拾い、人が確かめる必要があります。AIが出した数字をそのまま使うのは危険です。

見積業務でのAIの使い方は積算・見積にAIを使う研修で解説しています。

原価管理表:職人さんとの会話から表を作る

実演でできたこと:職人さんとの会話を録音した音声から、原価管理表を作りました。関数入りのExcelとして出力されるので、数字を入れ替えれば合計も変わります。

まだ難しいこと:会話の中で金額や数量があいまいなまま話されていると、AIもあいまいなまま表にします。聞き取れなかった部分や、推測で埋めた部分がないかは、人が確認します。

施工写真:現場別・工種別・時系列に仕分ける

実演でできたこと:大量の施工写真を、現場ごと・工種ごと・撮影順に自動で仕分けました。同じ場所の施工前と施工後の写真を対応付けたり、写真ごとのキャプションの下書きを作ったりもできました。

まだ難しいこと:写真に写っていないことは、AIには分かりません。工種の判断が写真だけでは難しいものもあります。提出用の写真台帳にする前に、人が目を通す工程は残ります。

写真整理を含む施工管理での使い方は施工管理の業務にAIを使う研修で紹介しています。

図面:仕様書の要約と、図面どうしの食い違いの洗い出し

実演でできたこと:分厚い仕様書を要約し、押さえるべき点を短くまとめました。また、複数の図面を読ませて、図面どうしで食い違っていそうな箇所を洗い出しました。

まだ難しいこと:見積と同じく、拾い出しや寸法の読み取りは、出せても人の確認が残ります。食い違いの洗い出しも「ここを確認したほうがよい」という候補として使います。見落としがゼロになるわけではありません。

図面の扱い方は図面の読み込みにAIを使う研修のページにまとめています。

請求書・書類フォルダ:紙の請求書の仕分けとファイル整理

実演でできたこと:下請け業者さんから届いた紙の請求書を読み取り、現場ごとに仕分けて集計しました。また、社内の共有フォルダについて、ファイル名の付け方をそろえる、階層を整理する、重複しているファイルを見つける、といった作業も行いました。

まだ難しいこと:手書きの文字や、かすれた印字は読み違えることがあります。集計結果は、元の請求書と突き合わせて確認します。

現場書類の整理については現場書類の作成・整理にAIを使う研修で解説しています。

提案資料・会社案内・採用パンフレット:写真と情報から原稿をつくる

実演でできたこと:現場の写真と工事の内容を渡し、提案用のスライドを作りました。実演では、外壁塗装の提案スライドを作っています。同じ考え方で、会社の情報と現場写真から、会社案内や採用パンフレットの原稿と構成も作りました。

まだ難しいこと:会社の強みや、お客様に伝えたい思いは、AIが勝手に知っているわけではありません。材料を渡すのは人です。仕上がった文章も、自社の言葉になっているかを人が見直します。

社内FAQ:よくある質問にAIが答える仕組み

実演でできたこと:社内でよく出る質問と答えをまとめ、AIが自動で答える仕組みを作りました。新しいソフトを買わなくても、すでに社内で使っているツールの範囲で作れました。

まだ難しいこと:元になる資料が古ければ、AIの答えも古くなります。誰が資料を更新するかを決めておく必要があります。

業務別のまとめ

業務 実演でできたこと まだ難しいこと
工程表 打合せ音声からバーチャート工程表(Excel・関数入り) 現場固有の段取り。初回は人が直す前提
見積書 図面と過去の見積から見積書とメール下書き 図面からの拾い出し・寸法の読み取りは出せるが、人の確認が残る
原価管理表 職人さんとの会話音声から関数入りの表 あいまいな発言の確認は人が行う
施工写真 現場別・工種別・時系列の仕分け、施工前後の対応付け、キャプション下書き 写真に写らない情報の判断
図面 仕様書の要約、図面間の食い違いの洗い出し 拾い出し・寸法の読み取りは出せるが、人の確認が残る
請求書・書類 紙の請求書の現場別集計、フォルダの命名・階層・重複の整理 手書き・かすれの読み違い
提案資料・会社案内 写真と工事内容から提案スライド、会社案内・採用パンフの原稿 自社の強みは人が材料を渡す
社内FAQ よくある質問への自動回答 元資料の更新は人が担う

業界の公開事例:建設会社が公表している取り組み

次に、建設会社が自社で公表している取り組みを紹介します。いずれも各社のニュースリリース等の公開情報に基づきます。PlanTiveはこれらの取り組みに関わっていません。

鹿島:グループ従業員向けに専用の対話型AIを用意

鹿島は2023年8月、自社と国内外のグループ会社(一部を除く)の従業員約2万人を対象に、専用の対話型AI「Kajima ChatAI」の運用を始めたと発表しています。日本マイクロソフトのAzure OpenAI Serviceを使い、社内ネットワークの中に構築したものです。入力した情報が外部の学習に使われない環境である点も説明されています。(出典:鹿島「グループ従業員2万人を対象に専用対話型AI『Kajima ChatAI』の運用を開始」2023年8月8日)

ポイントは、まず「安心して入力できる環境」を整えたことです。AIを使い始めるとき、多くの会社が最初につまずくのが情報漏えいの心配です。

清水建設:全従業員に生成AIサービスを提供

清水建設は2024年3月、全従業員向けに生成AIサービスの提供を始めたと公表しています。用途の例として、調査、アイデア出しや文書の作成、要約、メールの作成、発表資料の構成づくりなどが挙げられています。入力したデータが学習に使われないこと、会社支給の端末からだけ使えること、利用履歴が記録されることも説明されています。(出典:清水建設「全従業員向けに生成AIサービスの提供を開始」2024年3月26日)

挙げられている用途は、どれも特別な仕事ではありません。メールや要約といった、毎日の事務作業から使われている点に注目です。

大成建設:土木工事の全体施工計画書の下書きをAIで作る

大成建設は2025年11月、生成AIを使った土木工事の「全体施工計画書作成支援システム」を開発したと発表しています。公共工事の発注情報と、同社が蓄積してきた技術の知見をもとに、国土交通省の書式に沿った全体施工計画書の原稿を作るものです。発表では、特定の箇所を経験のある技術者が精査することで、計画書を効率よく作れると説明されています。(出典:大成建設「最新生成AIを活用した土木工事の『全体施工計画書作成支援システム』を開発」2025年11月28日)

ここでも、AIが作るのは「原稿」で、仕上げるのは技術者です。施工計画書でのAIの使い方は施工計画書の作成にAIを使う研修でも扱っています。

清水建設:進捗管理や写真記録を支える「AI施工管理システム」

清水建設は2026年5月、「AI施工管理システム」を構築したと発表しています。施工管理の記録や巡回の負担を軽くすることが目的で、進捗管理や大量の写真記録、報告書の入力・作成といった業務を対象にしています。発表によると、鉄道の連続立体交差工事の山留め杭工事に適用し、実証実験で有効性を確認したとのことです。今後はほかの工種への展開も検討するとしています。(出典:清水建設「建設現場のAXを加速させる『AI施工管理システム』を構築」2026年5月20日)

こうした仕組みは、大手が自社で開発したものです。中小の会社がそのまま同じものを持つのは現実的ではありません。ただ、「写真の整理」「報告書の下書き」といった業務の切り出し方は、汎用のAIでも参考にできます。

事例に共通する3つのこと

実演と公開事例を並べると、共通点が見えてきます。

  1. AIが作るのは下書き:工程表も、見積書も、施工計画書も、最後は人が確認しています。AIの出したものをそのまま提出する使い方は、どの事例にもありません。
  2. 入力してよい情報を先に決めている:公開事例では、入力した情報が学習に使われない環境を用意したうえで使い始めています。何を入れてよいかのルールが先です。
  3. 苦手なことを分けている:図面から拾い出した数量や読み取った寸法の確認、現場固有の段取りは、まだ人の仕事です。得意な部分だけをAIに任せています。

もう1つ付け加えるなら、使う人が慣れるまでには時間がかかります。どの業務で、どんな指示を出せばよいか。そこを社員が身につけないと、AIを契約しても使われないままになりがちです。

自社で試すときの最初の一歩

いきなり全社で始める必要はありません。次のような小さな業務から試すのがおすすめです。

  • 打合せの文字起こしを、議事録や工程のメモにまとめる
  • 過去の見積書を見本にして、メールの下書きを作る
  • 施工写真のフォルダ名やファイル名をそろえる

どれも、間違っても人がすぐ気づける業務です。慣れてきたら、工程表や見積書の下書きへと広げていきます。

業務ごとの具体的な使い方は建設業のAI活用事例ページで紹介しています。実際にいただいたご相談の内容も、今後まとめていく予定です。

社員がAIを使えるようになるための研修については、建設業向けAI研修のページをご覧ください。

PlanTiveが自治体の公開発注図書などで試し、かかった時間まで測った結果は、公開資料で測った自社検証データにまとめています。数量の拾い出しや安全書類の点検など6つの業務について、まだ人がやることも書いています。

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