自治体が公開している発注図書と、国が公開している様式を使って、建設業の書類業務を汎用AIで試しました。このページは、その手順と、当社が実際に測った結果をまとめたものです
株式会社PlanTiveの建設業向けAI研修では、研修で扱う業務を、まず自社で試してから教材にしています。ここでは、積算・安全書類・図面・施工計画書・工程表・写真台帳の6つについて、何をして、何ができて、何がまだ人の仕事なのかを公開します。
この検証の前提
- 使った資料は、自治体が入札情報として公開している発注図書と、国が公開している様式です。当社が受注した案件ではありません。
- このページの数字は、当社が実行して計測した実測値です。お客様の会社での成果ではありません。
- 人が同じ作業をした場合の時間は、換算による推定にしかならないため載せていません。「何分短くなった」という比較はしていません。
- 結果は、資料の内容・分量・社内の体制によって変わります。同じ結果になることを約束するものではありません。
- 使ったのは、ChatGPTやClaudeなどの汎用AIと表計算ソフトです。建設業向けの専用ソフトは使っていません。
1. 積算・数量拾い:138ページのPDFから106明細を抽出
これまでのやり方
138ページの発注図書を開き、集計表14ページから明細を1件ずつExcelに書き写します。目で見て写すため、写し間違いが起こりえます。設計変更があると、最初からやり直しです。
AIでしたこと
AIに、PDFの表の作りを調べさせ、読み取り用のプログラムをその場で書いて実行させました。人の代わりにAIが1件ずつ写すのではなく、AIが「写す道具」を作る使い方です。
測った結果
106明細を0.45秒で抽出しました。同じPDFの数量計算書と突き合わせ、確認した11項目はすべて一致しました。設計変更のときは、同じ処理を流し直せます。
まだ人がやること
これは、文字を取り出せるPDFの表を、正しく写せたという結果です。拾い出しそのものは短時間で出せましたが、そのまま提出できる状態にはならず、人が確認する工程は残ります。抽出した数字は、人が数量計算書と突き合わせて確かめる前提で使います。くわしくは積算・見積書づくりにAIを使う研修をご覧ください。
2. 安全書類:作業員名簿8名分を点検し、7件を検出
これまでのやり方
名簿を1名ずつ目で追い、保険欄の空欄や日付の前後を確かめます。年齢は生年月日から暗算するため、誕生日の前後で生じる1歳のずれを見落としがちです。
AIでしたこと
提出された名簿を、社内のチェック基準で点検させ、「不備」「確認」「人が判断」の3つに分けさせました。年少者・高齢者の扱いはAIに判断させず、必ず人へ回すようにしました。
測った結果
8名分を0.306秒で点検し、7件を検出しました(不備4件・確認1件・人が判断2件)。名簿に38歳とあるのに生年月日からは37歳になる、という1歳のずれも拾えました。直してもらうための依頼文の下書きまで作りました。
まだ人がやること
名簿の記入内容は架空のもので、実在の人ではありません。様式は国が公開している実物です。最終的に受け付けるかどうかは、人が判断します。現場書類の扱い方は現場書類・事務作業にAIを使う研修で紹介しています。
3. 図面:文字を取り出せない構造図を読み取り、検算7項目が一致
これまでのやり方
検索もコピーもできない、画像だけの構造図です。人が目で寸法を拾い、配筋のピッチと本数を電卓で確かめ、集計表から該当する行を探していました。
AIでしたこと
図面の画像を読み取らせ、寸法・配筋・材料表を表に起こさせました。読み取った値はそのまま式にして、まとめて検算させました。読み違いは起こりうる前提で、必ず検算をはさんでいます。
測った結果
検算した7項目はすべて一致し、食い違いは0件でした。集計表の記載とも一致を確かめました。
まだ人がやること
今回うまくいったのは、1枚の図面での結果です。図面の寸法の読み取りは、出せても読み違いが起こりえます。だからこそ、AIに読ませた値は検算で確かめ、最後は人が確認します。図面の扱い方は図面・仕様書の読み込みにAIを使う研修でくわしく説明しています。
4. 施工計画書:主要数量15区分を集計し、要確認6件を切り出し
これまでのやり方
過去の計画書を開いて章立てを写し、今回の工事に合わせて書き換えます。仕様書を見ないと分からない箇所は、書きながらその都度メモしていました。
AIでしたこと
抽出済みの数量から、工事概要・主要数量・施工手順・留意点を組み立てさせました。資料に書かれていないことは埋めさせず、「要確認」として切り出させるのが要点です。
測った結果
主要数量を15区分に集計しました。工期・交通規制・残土の受け入れ先など、資料に無い6件を要確認として示しました。人が判断すべき所が、はじめから見えた状態で出てきます。
まだ人がやること
要確認の6件を埋めるのは人です。現場ならではの事情は、人が伝えない限りAIは知りません。進め方は施工計画書づくりにAIを使う研修をご覧ください。
5. 工程表:工事概要から34工種の工程表を約1分で作成
これまでのやり方
工種を並べ、つながりと稼働日を見ながら日付を手で入れます。1つの工種をずらすと、それ以降を全部引き直すことになります。
AIでしたこと
構造・面積・着工日などの工事概要を渡し、工種の順番と稼働日から開始日・終了日を計算させました。バーチャート付きのExcelと、A3横1枚のPDFを書き出させました。
測った結果
34工種の工程表が約1分で出ました。変更があっても、入力を変えて作り直せます。
まだ人がやること
工種ごとの日数や担当業者は、一般的な情報から作ったサンプル値です。実際には御社の値に入れ替えて使います。出てくるのはたたき台で、工期の最終判断と協力会社との調整は人が行います。くわしくは工程表づくりにAIを使う研修をご覧ください。
6. 写真台帳:工事写真20枚から台帳181行を作成し、未撮影2件を検出
これまでのやり方
写真を1枚ずつ開き、黒板の内容を台帳に手で入力して貼り付けます。撮り漏れに気づくのは工事の終わりごろが多く、撮り直せないこともあります。
AIでしたこと
写真の黒板を読み取らせ、工種・時期・施工内容・撮影日を整理させました。そのうえで撮影計画のリストと突き合わせました。読み取れない写真は判定させず、撮り直しの候補として人に回しました。
測った結果
写真台帳を、Excel(181行)とPDF(7ページ)で作りました。撮影が必要な22件のうち、未撮影2件と読み取れない1件を、どの写真かまで示せました。
まだ人がやること
検証には、黒板を描いたダミー写真を使いました。斜めから撮った写真、暗い場所の写真、手書きの黒板など、本物の工事写真での読み取りの精度は、まだ確かめていません。写真の扱い方は施工管理(写真・原価・請求書)にAIを使う研修で紹介しています。
6つの検証から分かったこと
- AIに「写す道具」を作らせると、速くて正確になりやすい:表の書き写しや名簿の点検は、AIに直接読ませるより、点検や抽出の手順を作らせたほうが安定しました。
- 資料に無いことは、埋めさせずに切り出させる:施工計画書や名簿では、AIに判断させない所をはじめから決めておくことが大切でした。
- 図面と写真は、読み違いがある前提で使う:うまくいった結果でも、検算や人の確認をはさむことを前提にしています。
研修では、こうした使い方を御社の書類で練習します。PlanTiveが自社で行ったほかの実演は建設業のAI活用事例にまとめています。
この検証を監修した人
検証と研修の内容は、鹿島建設出身で施工管理・営業の実務を知る代表の加地勇大と、AI開発の専門エンジニアが共同で設計しています。くわしくは講師・監修者の紹介をご覧ください。
研修の料金と助成金
研修の料金は建設業向けAI研修の料金プランに載せています。なお、人材開発支援助成金は10時間以上の訓練が対象です。ライト(3時間)とスタンダード(6時間)はそのままでは対象外ですが、研修を10時間以上に組み立て直すと対象になる場合があります。条件は年度で変わるため、厚生労働省の案内か管轄の労働局でご確認ください。
