清水建設・大成建設のAI活用|大手ゼネコンの公開事例と、中小の建設会社が真似できること

プライバシーポリシー

清水建設や大成建設など、大手ゼネコンのAI活用のニュースが増えています。「施工計画書をAIが作る」「AIが現場の映像を見て判定する」といった話を聞くと、自社とは別の世界に感じるかもしれません。

この記事では、各社が公式に発表している内容だけをもとに、大手ゼネコンのAIの取り組みを整理します。そのうえで、中小の建設会社が汎用のAIで真似できる部分と、真似しにくい部分を分けて考えます。

なお、この記事は各社の公開情報をまとめたものです。当社(PlanTive)は各社の取り組みには関わっていません。日付や名称は各社の発表どおりに記載しています。

清水建設のAI活用

全従業員向けに汎用の生成AI「法人GAI」を提供

清水建設は2024年3月26日、2023年11月から生成AIサービス「法人GAI」を導入し、全従業員向けに提供を始めたと公表しました。ChatGPTをベースにした企業向けのサービスです(清水建設「全従業員向けに生成AIサービスの提供を開始」)。

同社は、自社で独自に作る方法もある中で、変化の速い生成AIの新しい機能を早く社員に届けるため、サービスの導入を選んだと説明しています。入力したデータが学習に使われないこと、会社支給の端末からしか使えないこと、利用履歴が残ることなど、安全面の機能も挙げています。

清水建設の公表によると、1,200名以上の従業員が利用しています。使い道は調査、アイデア出し、文書生成、プログラミング補助、要約などです。従業員からは、メール作成や資料の構成づくりが楽になったという声が紹介されています。

一方で、調べものに使うともっともらしい誤り(ハルシネーション)が多く出るため、「使い物にならない」と判断されて使われなくなる心配もあると書いています。そのため、生成AIの得意・苦手や効果的な使い方について、引き続き教育を行う予定としています。

カメラ映像を解析する「AI施工管理システム」

清水建設は2026年5月20日、建設現場のカメラ映像をAIで解析し、施工の状況をリアルタイムに自動で判定する「AI施工管理システム」を構築したと発表しました。施工管理の記録や巡回の負担を減らすことが目的です(清水建設「建設現場のAXを加速させる『AI施工管理システム』を構築」)。

発表では、マルチモーダルLLM(文章だけでなく画像も扱えるAI)などの技術を組み合わせていると説明されています。実証は2025年12月から、横浜市の相鉄本線鶴ケ峰駅付近の山留め杭工事で行われたとしています。今後は精度の向上や、他の工種への展開を検討するとしています。

「AIロボット」の研究開発

清水建設は2026年7月8日、「AIロボット」の研究開発を本格化すると発表しました。ヒューマノイドロボットによる現場の巡回と、ロボットアームによる塗装作業の実用化を目指すとしています(清水建設「『AIロボット』の研究開発を本格化」)。

大成建設のAI活用

OpenAIと連携した生成AIの人材育成

大成建設は2025年11月17日、OpenAIと連携し、ChatGPT Enterpriseを使った人材育成と業務改革の全社プロジェクトを始めたと発表しました(大成建設「建設業界最大規模の生成AIプロジェクトが始動」)。

発表によると、育成プログラムは2025年4月に250名で始まり、同年8月には1,000名体制へ広がりました。内容は、基礎から応用まで学ぶ研修や、業務に合わせた「カスタムGPT」を作るワークショップなどです。対象の業務は設計・施工、営業支援など多岐にわたるとしています。

大成建設は、今後ChatGPT Enterpriseを全社員へ順次広げ、各部門のAIリーダーを育てる方針です。

施工計画書×AI:「全体施工計画書作成支援システム」

大成建設は2025年11月28日、土木工事の「全体施工計画書作成支援システム」を開発したと発表しました(大成建設「最新生成AIを活用した土木工事の『全体施工計画書作成支援システム』を開発」)。

発表では、背景として次の点が挙げられています。

  • 全体施工計画書は、工程、施工方法、資材・機械、安全・品質管理など内容が多い
  • 工事の規模によっては500ページを超える
  • 経験のある技術者の指導のもと手作業で作っており、負担と属人化が課題だった

システムの中身は次のとおりと説明されています。

  • 画像と文章をあわせて扱う生成AI(視覚言語モデル、VLM)を使う
  • 入札公告や特記仕様書などの発注情報と、同社が蓄積した技術ナレッジをもとに原稿を作る
  • 国土交通省の書式に沿ったWord形式で出力し、人が修正しやすくしている
  • AIの出力のうち信頼性が低い箇所を自動で示し、誤りを防ぐ工夫をしている

削減の度合いなど詳しい内容は、大成建設の発表資料をご確認ください。

ここで押さえておきたいのは、このシステムが同社のナレッジを組み込んだ自社開発の専用システムだという点です。同じものを中小の建設会社がそのまま用意するのは簡単ではありません。

鹿島・大林組・竹中工務店の取り組み(概要)

鹿島建設:グループ専用の対話型AI

鹿島建設は2023年8月8日、グループ従業員約2万人を対象に、専用の対話型AI「Kajima ChatAI」の運用を始めたと発表しました。ChatGPTと同等のAIモデルを社内ネットワーク内に構築し、入力した情報が外部の学習に使われない環境にしたとしています(鹿島建設「グループ従業員2万人を対象に専用対話型AI『Kajima ChatAI』の運用を開始」(PR TIMES))。

大林組:設計初期のデザイン検討を支援する「AiCorb」

大林組は2022年3月22日、スケッチや3Dモデルからさまざまなファサード(建物の外観)デザインを提案するAI「AiCorb(アイコルブ)」の開発を発表しました。提案したデザイン案を3Dモデルにする技術もあわせて搭載しているとしています(大林組「建築設計の初期段階の作業を効率化する『AiCorb』を開発」)。

竹中工務店:手書き図から加工データへ

竹中工務店は2026年6月30日、技能工の手書き図を撮影すると、生成AIが加工用のCADデータに変換し、ボード材加工ロボットで加工するシステムを発表しました(竹中工務店「技能工の手書き図をAIで読み解くボード材自動加工システムを開発」)。

中小の建設会社が「真似できる部分」と「真似しにくい部分」

大手の取り組みは、大きく2種類に分けられます。

  • 社員全員が使える汎用の生成AIと、その使い方の教育
  • 自社のデータやナレッジ、カメラ、ロボットと組み合わせた専用のシステム

前者は、中小の建設会社でも規模を小さくして真似しやすい部分です。後者は、開発費やデータの蓄積が必要なため、真似しにくい部分です。

大手の取り組み 中小での真似しやすさ 中小で考えられるやり方
全社員向けの汎用生成AI(清水建設、鹿島建設) 真似しやすい 企業向けプランの汎用AIを、少人数から使い始める
使い方の教育・研修(清水建設、大成建設) 真似しやすい 自社の書類仕事を題材に、社内で使い方をそろえる
施工計画書の原稿を作る専用システム(大成建設) そのままは難しい 汎用AIで、計画書の章立てや文章の下書きを作る
カメラ映像の自動判定(清水建設) 難しい 現場写真の仕分けや説明文の下書きにAIを使う
ロボット・加工システム(清水建設、竹中工務店) 難しい 当面は対象外と考える

真似できる①:汎用AIを全員が使える状態にする

清水建設は、自社で作るよりサービスを導入するほうが新しい機能を早く使えると判断したと説明しています。中小の建設会社にとっても、汎用のAIを企業向けのプランで使うのは現実的な選択肢です。

そのとき大事なのは、清水建設が挙げているような安全面の確認です。入力した情報が学習に使われない設定になっているか、だれがどの端末で使うかを先に決めておきます。

真似できる②:使い方の教育をセットにする

清水建設も大成建設も、道具を配るだけでなく教育を続けると公表しています。誤りが出たときに「AIは使えない」で終わらせず、どこで使い、どこを人が確かめるかを社内でそろえることが大切です。

当社の建設業の書類仕事に合わせたAI研修も、この「道具より使える人を増やす」という考え方に立っています。

真似しにくい部分:自社ナレッジを組み込んだ専用システム

大成建設の施工計画書システムは、同社が長年ためてきた技術ナレッジがあってこそ成り立つものです。清水建設の映像判定やロボットも、専門の開発体制があっての取り組みです。

こうした専用システムを中小の建設会社が自前で作るのは、費用の面でも人の面でも簡単ではありません。当社としては、高額な専用ソフトを探す前に、汎用AIでできる範囲を試すことをおすすめしています。

施工計画書は「汎用AIで下書き」から

専用システムがなくても、汎用AIで施工計画書の下書きを作ることはできます。たとえば次のような使い方です。

  • 特記仕様書の要点を箇条書きにまとめる
  • 過去の計画書をもとに、今回の工事に合わせた章立てを作る
  • 工法の説明や安全管理の文章の下書きを作る

ただし、汎用AIはその現場の条件や自社の段取りを知りません。出てきた文章は下書きとして、必ず経験のある技術者が確認・修正します。過去の計画書を型にして、次の工事の骨子を作る進め方は施工計画書の下書きをAIで作る研修で紹介しています。

図面まわりは「できること」と「まだ難しいこと」を分ける

大林組や竹中工務店のように、図や設計にAIを使う取り組みも進んでいます。汎用AIでも、仕様書の要約や、図面どうしの食い違いの洗い出しといった使い方は試しやすい分野です。

一方で、図面からの拾い出しや寸法の読み取りは、AIが短時間で出せても、そのまま提出できる状態にはならず、人の確認が残ります。できることとできないことの線引きは図面の読み込みと食い違い探しにAIを使う研修で整理しています。

まとめ

  • 清水建設は、全従業員向けの汎用生成AIと教育、映像を使ったAI施工管理、AIロボットの研究開発を公表している
  • 大成建設は、OpenAIと連携した人材育成と、施工計画書の原稿を作る専用システムを公表している
  • 大手の取り組みのうち「汎用AI+教育」は、中小の建設会社でも真似しやすい
  • 自社ナレッジを組み込んだ専用システムは真似しにくい。まずは汎用AIで下書きを作るところから考える

大手のニュースを見て「うちでは何ができるか」を整理したいときは、建設業向けAI研修の内容をご覧ください。建設業のDX全体の考え方は建設業のDXとは?公開事例と中小の建設会社の始め方でまとめています。

大手のような専用システムを作らなくても、汎用AIで試せることは多くあります。PlanTiveが公開資料で試した結果は公開資料で測った自社検証データに、現場監督向けの研修は現場監督・施工管理者向けのAI研修にまとめています。

参考・出典

\ 最新情報をチェック /