建設業でAIに何ができるか|生成AIの使いどころとデメリット、始め方

「AIで仕事が楽になるらしい」。そう聞いても、建設の現場で何に使えるのかは、なかなか見えてきません。
この記事では、建設業でAI、特に生成AIにできることと、まだ難しいことを整理します。良いところだけでなく、デメリットも正面から書きます。最後に、無理のない始め方を紹介します。
読んでほしいのは、経営者や部門長、現場監督の方です。AIに詳しくなくても読めるように書いています。
生成AIとは:文章や表の「下書き」を作る道具
生成AIは、話しかけた内容や渡した資料をもとに、文章・表・画像などを作るAIです。ChatGPTやClaude、Geminiなどが代表例です。
現場の言葉で言えば、「下書きを作ってくれる新人」に近い存在です。仕事は速いですが、現場のことはまだ知りません。そして、ときどき自信満々に間違えます。だから、最後は人が確認します。この前提さえ押さえれば、十分に使える道具です。
なぜ今、建設業でAIが話題なのか
背景には、建設業の働き方をめぐる2つの動きがあります。
1つは、時間外労働の上限規制です。建設業にも2024年4月から上限規制が適用されています。原則は月45時間・年360時間以内です。臨時的な特別の事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内とされています。なお、災害時の復旧・復興の事業には一部の規制が適用されないなどの扱いがあります。(出典:厚生労働省「建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制」)
もう1つは、国の方針です。国土交通省は2024年4月に「i-Construction 2.0」を策定しました。人口減少が進むなかで、2040年度までに建設現場の省人化を少なくとも3割、つまり生産性を1.5倍に高めることを目指すとしています。柱の1つには「施工管理のオートメーション化」が挙げられています。(出典:国土交通省「『i-Construction 2.0』を策定しました」2024年4月16日)
残業はこれ以上増やせない。人も増えにくい。その中で、書類や事務の時間を減らす手段の1つとして、AIが注目されています。
建設業でAIにできること:業務別の使いどころ
生成AIが得意なのは、「読む」「まとめる」「下書きする」「仕分ける」の4つです。建設業の業務に当てはめると、次のようになります。具体的な事例は建設業のAI活用事例の記事で紹介しています。
図面・仕様書:読んでまとめる
分厚い仕様書を要約したり、複数の図面を見比べて食い違っていそうな箇所を洗い出したりできます。確認すべき点の「候補」を出してもらう使い方です。詳しくは図面の読み込みにAIを使う研修のページをご覧ください。
積算・見積:過去の見積を見本に下書きする
過去の見積書の形式や言い回しに合わせて、見積書やお客様へのメールの下書きを作れます。一方で、数量の拾い出しは人の仕事として残ります(後述)。見積業務での使い方は積算・見積にAIを使う研修で解説しています。
施工管理:写真や記録を仕分ける
施工写真を現場別・工種別・撮影順に仕分けたり、写真のキャプションの下書きを作ったりできます。日報や報告書の下書きにも向いています。施工管理の業務にAIを使う研修で、写真整理を含めた使い方を紹介しています。
施工計画書:ひな形と過去の計画書から下書きする
工事の条件と、自社の過去の計画書を渡せば、施工計画書の構成や文章の下書きを作れます。中身を判断するのは技術者です。施工計画書の作成にAIを使う研修で手順を扱っています。
工程表:打合せの内容から表にする
打合せの音声や文字起こしから、バーチャート工程表のたたき台をExcelで作れます。話した内容が表になるので、書き起こす手間が減ります。工程表の作成にAIを使う研修で詳しく紹介しています。
現場書類:請求書の集計やフォルダ整理
紙の請求書を現場ごとに仕分けて集計したり、共有フォルダのファイル名をそろえたりできます。地味ですが、毎月の手間が大きい業務です。現場書類の作成・整理にAIを使う研修で扱っています。
建設業でAIを使うデメリットと、まだ難しいこと
ここからが大事なところです。AIには苦手なことや、使ううえでの注意点があります。知らずに使うと、かえって手間が増えたり、トラブルになったりします。
1. 図面からの拾い出し・寸法の読み取りは、出せても人の確認が残る
いちばん期待されがちで、いちばん注意が必要な点です。生成AIは図面を「見て」内容を説明することはできます。しかし、図面からの拾い出しや寸法の読み取りは、短時間で出せても、そのまま提出できる状態にはならず、人の確認が残ります。
積算の数量をAIの答えのまま使うと、見積の金額がずれるおそれがあります。数量は人が拾い、人が確かめる。AIはその前後の書類づくりを手伝う。この分担が現実的です。
2. 現場固有の段取りを、AIは知らない
搬入経路の制約、近隣との約束、協力会社の都合、その現場ならではの納まり。こうした情報は、図面にも資料にも書かれていないことが多いものです。書かれていないことは、AIには分かりません。
そのため、AIが作る工程表や施工計画書は、最初は「一般的な内容」になります。現場を知る人が直して、はじめて使えるものになります。
3. 情報漏えいのリスク:入力してよい情報のルールが必要
AIの種類や設定によっては、入力した内容がサービスの改善に使われる場合があります。お客様の個人情報、未発表の物件情報、取引先との契約内容などを、何も考えずに入力するのは危険です。
使い始める前に、「入れてよい情報」と「入れてはいけない情報」を社内で決めておく必要があります。会社として契約する場合は、入力した情報が学習に使われない設定かどうかも確認します。
4. AIはもっともらしく間違える
生成AIは、事実と違うことを、それらしい文章で答えることがあります。法令や基準の条文、数字、日付は特に注意が必要です。
AIの答えは、そのまま提出しない。元の資料や公式の情報と照らし合わせる。この確認の時間は、なくなりません。確認の手間を含めても楽になる業務から使うのがコツです。
5. 使う人が慣れるまでに手間がかかる
AIは、指示の出し方で答えが大きく変わります。最初のうちは、思うような答えが返ってこず、「自分でやったほうが早い」と感じることもあります。
道具を入れただけでは、現場では使われません。どの業務で、どう指示を出せばよいか。社員が身につけるまでの時間を見込んでおく必要があります。
デメリットのまとめ
| デメリット・難しいこと | 備え方 |
|---|---|
| 図面からの拾い出し・寸法の読み取りは出せるが、人の確認が残る | 数量は人が拾う。AIは書類づくりの手伝いに使う |
| 現場固有の段取りを知らない | AIの出力はたたき台。現場を知る人が直す |
| 情報漏えい | 入力してよい情報のルールを先に決める |
| もっともらしい間違い | 元資料・公式情報と照らし合わせて確認する |
| 慣れるまでの手間 | 小さな業務から始め、使い方を社内で共有する |
専用ソフトと汎用AI、どちらから始めるか
建設業向けには、積算や写真管理などの専用ソフトも出ています。業務によっては専用ソフトが合う場合もあるでしょう。
ただ、最初から高額な専用ソフトを入れる必要はないと考えています。ChatGPTやClaudeのような汎用のAIでも、書類の下書きや整理など、できることは多くあります。まず汎用のAIで「自社のどの業務に効くか」を見極める。そのうえで、必要なら専用の仕組みを検討する。この順番のほうが、無駄な出費を避けやすくなります。
大事なのは道具よりも、使う人です。同じAIでも、使い方を知っている社員と知らない社員では、できることが大きく変わります。
建設会社がAIを始める3つのステップ
- ルールを決める:入力してよい情報、使ってよいAI、確認の責任者を決めます。最初はA4で1枚程度で十分です。
- 小さな業務で試す:議事録のまとめ、メールの下書き、フォルダ名の整理など、間違えても人がすぐ気づける業務から始めます。
- 使い方を社内で共有する:うまくいった指示の出し方を、部署や現場で共有します。一部の人だけが使える状態から、誰でも使える状態にしていきます。
慣れてきたら、工程表や見積書、施工計画書の下書きへと広げていきます。
社員教育としての「建設業向けAI研修」
ステップ3の「使い方を社内で共有する」を、自社だけで進めるのが難しい会社もあります。PlanTiveでは、建設会社の実際の業務を題材にした建設業向けAI研修を行っています。図面、見積、施工管理、施工計画書、工程表、現場書類といった業務ごとに、汎用のAIの使い方とできないことの両方を扱います。
研修の費用には、助成金が使える場合があります(人材開発支援助成金は10時間以上の訓練が対象です)。条件は年度によって変わるため、最新の内容は厚生労働省や都道府県の労働局でご確認ください。料金は建設業向けAI研修の料金プランにまとめています。
よくある質問
AIを使うと、積算や施工管理の仕事はなくなりますか
すぐになくなるとは考えにくいです。この記事で書いたとおり、拾い出した数量の確認や現場固有の判断は、まだ人の仕事です。AIは、その周りにある書類づくりや整理の時間を減らす道具として使うのが現実的です。
パソコンが得意でない社員でも使えますか
使えます。生成AIは、ふだんの言葉で話しかければ答えてくれます。音声で話しかけることもできます。むしろ現場をよく知っている人ほど、AIの間違いに気づきやすく、上手に使えることがあります。
無料のAIで試してもよいですか
個人で使い方を試すだけなら、無料版から始めることもできます。ただし、会社の情報を入力する場合は注意が必要です。入力した内容の扱いはサービスや設定によって違うため、社内のルールを決めてから使いましょう。
まとめ
- 生成AIは「読む・まとめる・下書きする・仕分ける」が得意です。
- 図面から拾い出した数量や読み取った寸法の確認、現場固有の段取りは、まだ人の仕事です。
- 情報漏えいと間違いには、入力ルールと人の確認で備えます。
- 高額な専用ソフトより先に、汎用のAIと社員の使い方から始めるのが現実的です。
どのAIを使うかで迷う場合は、Claude・ChatGPT・CopilotのAIツール別研修で、建設業の業務での向き不向きを比べられます。図面からの拾い出しを公開資料で試し、人の確認が残ることを確かめた結果は、公開資料で測った自社検証データに載せています。

