AI研修に使える助成金とは?対象・助成率・申請の流れを解説【2026年度版】

この記事の目次
AI研修に助成金は使える?まず押さえる結論と全体像
結論から言うと、社員向けのAI研修は、内容や進め方が要件を満たせば国の助成金の対象になり得ます。中心となるのは、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。これは、事業主が雇用する労働者に職務に関連した知識・技能を習得させる訓練を計画に沿って実施した場合に、訓練にかかった経費の一部と、訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。
なかでも、DX推進や新規事業に伴うAI・データ活用のリスキリングを対象とする「事業展開等リスキリング支援コース」は、中小企業なら訓練経費の最大75%が助成対象になり、AI研修と相性のよいコースとして注目されています。ただしこのコースは令和4〜8年度の期間限定で、2026年度(令和8年度)が最終年度とされている点に注意が必要です。
AI研修が助成対象になり得るのは、国が企業のリスキリング(学び直し)を後押ししているためです。生成AIの普及で「ツールは配ったが使いこなせない」という企業が増えるなか、社員の実務スキルを底上げする研修は、まさに助成金が想定する「職務に関連した知識・技能の習得」に当てはまります。だからこそ、制度を正しく理解して使えば、研修費の負担を大きく抑えられます。
この記事は、「どのAI研修サービスを選ぶか」という比較ではなく、助成金を使うための"申請実務"に絞って解説します。対象になるコースの種類、助成率・上限額、対象になる要件と対象外、申請の流れと必要書類、そして不支給になりやすいケースまでを、厚生労働省の公式パンフレットをもとに整理します。サービスの選び方や費用相場そのものを知りたい場合は、別記事のAI研修おすすめ比較|選び方・費用・助成金を先にご覧ください。
なお、助成率・上限額・要件は年度ごとの制度改正で変わります。本記事の数値は執筆時点(2026年7月)の公式資料に基づく目安であり、申請前には必ず最新の公募要領・厚生労働省サイト、または管轄の労働局でご確認ください。
AI研修に使える助成金の種類|人材開発支援助成金の主なコース
人材開発支援助成金にはいくつかのコースがあり、AI研修で使える可能性が高いのは主に次の3つです。同じ「AIの研修」でも、その目的(DX推進なのか、職務スキルの底上げなのか、サブスク型で学ぶのか)によって、使いやすいコースと助成率が変わります。
事業展開等リスキリング支援コースは、新規事業の立ち上げやDX・GX(脱炭素)推進に伴い、新しい分野で必要になる知識・技能を身につける訓練が対象です。AI・データ活用を全社的に進めるための研修とは特に相性がよく、中小企業なら経費の75%が助成対象になります。一方で、単に「業務に役立つAIの使い方を学ぶ」一般的な研修は、人材育成支援コース(経費助成45%〜)の方が使いやすい場合があります。
人への投資促進コースは、高度デジタル人材の育成や、サブスクリプション型(定額制)の研修サービスを想定したコースです。AIツールの使い方を継続的に学べるオンライン学習サービスを社内に導入する場合は、このコースの「定額制訓練」が選択肢になります。ただし定額制訓練は経費助成のみ(賃金助成なし)で、上限は1人1月あたり2万円と、性質がやや異なる点は押さえておきましょう。
コース選びの目安はシンプルです。「新規事業やDX推進のために、これまで社内になかったAI・データ活用スキルを身につけさせたい」ならリスキリング支援コース、「既存業務の延長でAIの使い方を底上げしたい」なら人材育成支援コース、「継続的に学べるオンライン学習サービスを導入したい」なら人への投資促進コースの定額制訓練、と考えると整理しやすくなります。1つの研修が複数コースの要件に当てはまることもあり、その場合は助成率や上限、社内の準備しやすさで選びます。どのコースも、まずは自社の研修が「何のための訓練か」を言語化することが出発点です。
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助成率・上限額はいくら?試算でつかむ軽減イメージ
ここでは、AI研修で使いやすい事業展開等リスキリング支援コースを例に、中小企業の助成率と上限額を見ていきます。このコースの中小企業向けの助成内容は、訓練経費の75%(中小企業以外は60%)と、訓練期間中の賃金として1人1時間あたり1,000円(同500円)です。ただし経費助成には、1人1訓練あたりの上限額が訓練時間に応じて定められています。
たとえば中小企業が、1人あたり20万円のAI研修(OFF-JT・訓練30時間)を10名に受講させたとします。経費助成は「20万円×75%=15万円/人」で、10名なら150万円。ここに賃金助成(1,000円×30時間×10名=30万円)が加わり、単純計算で合計180万円ほどが助成対象になり得ます。もちろん、上限額や賃金助成の限度時間(1人1訓練あたり1,200時間まで)、実際の支給要件によって金額は前後します。
経費助成と賃金助成は役割が異なります。経費助成は「研修費用そのもの(受講料・教材費など)」の一部を、賃金助成は「社員が研修を受けている時間の人件費」の一部を補うものです。集合研修やライブ配信のように受講時間がはっきりする研修では両方を活用できますが、eラーニングや通信制、定額制サービスによる訓練は経費助成のみとなり、eラーニング・通信制の経費助成上限は中小企業で15万円(大企業10万円)に設定されています。自社の研修が「時間の記録を取れる形式か」で、受けられる助成の内訳が変わると理解しておくとよいでしょう。
なお、賃金助成や受講回数にも制限があります。同じ労働者が助成対象の訓練を受けられるのは1年度で3回まで、1事業所が1年度に受給できる助成額は1億円が上限です。金額の考え方はコースや年度で変わるため、具体的な試算は必ず最新の公募要領で確認してください。費用相場そのものの目安はAI研修の費用・選び方の記事にまとめています。
AI研修が助成金の対象になる要件・対象にならないもの
助成金は「AI研修だから対象」ではなく、訓練の形式・時間・内容の要件を満たして初めて対象になります。事業展開等リスキリング支援コースの基本要件は、①OFF-JT(通常の業務から離れて実施する訓練)であること、②実訓練時間が10時間以上であること、③「事業展開」「DX・GX化」「人事・人材育成計画に基づく職務」のいずれかに関連する訓練であること、の3点です。逆に、これを外すと不支給になりやすいポイントでもあります。
✓対象になりやすいAI研修
業務に関連するAI・DXスキルを学ぶOFF-JT(10時間以上)。集合研修・オンラインのライブ研修・eラーニング・定額制のサブスク型研修など。受講するのは雇用保険に加入している社員。計画届を提出したうえで開始する研修。
!対象外・注意が必要なもの
実務を通じて教えるOJTのみの研修。合計10時間に満たない短時間セミナー。趣味・教養など業務と無関係な内容。個人事業主本人・役員・雇用保険未加入者の受講。そして、計画届を出す前に始めてしまった研修。
特に見落としやすいのが「OFF-JTであること」と「計画届を出してから始めること」の2点です。実務の中でAIツールの使い方を教えるOJT形式だけの研修は、このコースでは対象になりません。また、助成金は"事前申請"が大原則で、計画届を出す前に始めた研修はさかのぼって対象にできません。
「10時間以上」の考え方も確認しておきましょう。集合研修やライブ配信であれば実際の受講時間で数えますが、eラーニングや通信制の場合は、標準学習時間が10時間以上、または標準学習期間が1か月以上であることが目安とされています。市販のeラーニングを使う場合は、その講座の標準学習時間が要件を満たすかを事前に確認しておくと安心です。加えて、研修内容が「受講する社員の職務にどう関係するか」を説明できることも重要で、業務と無関係な一般教養的な内容は認められにくくなります。自社のAI研修がどのコース・どの形式に当てはまるかを、早い段階で見極めておくことが大切です。
「中小企業」の範囲と、30人・法人・個人事業主の扱い
助成率や上限額は「中小企業かどうか」で変わるため、自社が中小企業に当たるかの確認は欠かせません。人材開発支援助成金では、業種ごとに「資本金・出資の総額」または「常時雇用する労働者数」のいずれかを満たせば中小企業として扱われます。「従業員30人」といった人数だけで一律に決まるわけではなく、業種と資本金も合わせて判断される点がポイントです。
| 主たる事業 | 資本金・出資の総額 | 常時雇用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店を含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
たとえば従業員30人の会社は、上の表のいずれの業種でも「労働者数」の基準を満たすため、原則として中小企業に該当します(=高い方の助成率が適用されやすい)。判断は業種ごとに、資本金か労働者数のどちらか一方を満たせばよい、という点を押さえておきましょう。
一方で気をつけたいのが「個人」の扱いです。この助成金の対象になるのは、事業主に雇用され雇用保険に加入している労働者です。したがって、個人事業主本人や、雇用保険に入っていない役員・フリーランスがAI研修を受けても、その本人分は対象になりません。ただし、個人事業主であっても従業員(雇用保険被保険者)を雇っていれば、その従業員向けのAI研修は対象になり得ます。法人・個人という区分よりも「雇用保険の被保険者か」が判断の軸になる、と整理しておくと分かりやすいです(細かな該当可否は労働局でご確認ください)。
申請の流れ・必要書類・スケジュール
助成金でつまずく最大の原因は、金額よりも「手続きの順番と期限」です。人材開発支援助成金は訓練を始める前の計画届提出が必須で、後から思い立って申請することはできません。全体の流れは次の通りです。
AI研修で助成金を受けるまでの流れ
事前準備(社内体制の整備)
職業能力開発推進者を選任し、事業内職業能力開発計画を策定・周知します。計画届の提出日までに済ませておく必要があります。
職業訓練実施計画届の提出
訓練開始日の6か月前から1か月前までに、計画届(様式第1-1号)と必要書類を労働局へ提出します。この提出前に研修を始めてはいけません。
AI研修(OFF-JT)の実施
計画に沿って研修を実施します。訓練にかかる費用は、支給申請までに支払いを終えておく必要があります。出席簿など実施の記録も残します。
支給申請書の提出
訓練終了日の翌日から2か月以内に、支給申請書(様式第4-2号)と必要書類を労働局へ提出します。
労働局の審査・支給決定
審査を経て支給または不支給が決定します。助成金は後払いのため、研修費はいったん自社で立て替える資金計画が必要です。
主な必要書類は、計画届の段階では職業訓練実施計画届・訓練カリキュラム・見積書など、支給申請の段階では支給申請書・賃金台帳・出勤簿・受講証明書・領収書などです。コースによっては事業展開等実施計画書も求められます。前提として、計画届の提出日までに職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・周知を済ませておく必要があり、ここを見落とすと計画届の受理が遅れます。
スケジュールは「計画届は開始1か月前まで」「支給申請は終了後2か月以内」を軸に、研修日程から逆算して組むのが安全です。計画届は開始日の6か月前から出せるため、社内体制の整備・カリキュラムの確定・見積取得を前倒しで進め、余裕をもって提出するのが理想です。助成金は後払いであるため、研修費をいったん全額立て替える資金繰りも計画に織り込んでおきましょう。準備には想像以上に時間がかかるため、AI研修を検討し始めた段階で早めに動き出すことをおすすめします。
不支給・返還になるケースとよくある失敗&対策
助成金は「申請すれば必ずもらえる」ものではなく、要件を外すと不支給になり、支給後でも不正・虚偽が判明すれば返還を求められます。AI研修でありがちな失敗を、つまずき方(BEFORE)と対策(AFTER)で整理します。
失敗例1:計画届の前に研修を始めてしまう
BEFORE
「良い研修が見つかったからすぐ受講」と、計画届の提出前に始めてしまい、そもそも助成対象外になる。
AFTER
研修日程が固まる前に、まず計画届の提出時期(開始1か月前まで)から逆算してスケジュールを組む。
失敗例2:研修内容が「業務との関連」を説明できない
BEFORE
「流行っているからAI研修を」と目的が曖昧なまま申請し、職務との関連性を問われて認められない。
AFTER
「どの職務の、どの業務を、どう変えるための研修か」を計画書に具体的に落とし込み、DX推進との結びつきを明示する。
失敗例3:出席簿・領収書など証拠書類が不足する
BEFORE
受講の記録や支払いの証拠が残っておらず、支給申請の段階で書類がそろわない。
AFTER
出席簿・受講証明書・領収書・賃金台帳を研修の実施と同時に残す運用にし、支給申請までに支払いも完了させる。
このほか、実態のない訓練や水増し請求、助成金の有無だけで費用を著しく高く設定するような行為は、不支給や支給決定の取消し・返還の対象になります。「要件に沿って計画し、記録を残し、期限を守る」という当たり前を徹底することが、結果的に最短の近道です。
2026年度(令和8年度)の制度改正と「最終年度」の注意点
制度は毎年のように見直されており、2026年度(令和8年度)にもいくつかの変更がありました。まず、事業展開等リスキリング支援コースの対象訓練に、従来の「事業展開」「DX・GX化」に加えて「企業内の人事・人材育成に関する計画に基づく訓練」が新たに加わりました。中長期の人材育成計画に沿ったAI研修も対象にしやすくなった一方で、この新しい類型を中小企業が使う場合は、あらかじめ認定経営革新等支援機関(認定支援機関)による計画内容の確認を受けることが要件とされています。
さらに、訓練終了後には計画の実施状況を労働局へ報告する義務があり、報告に不備があると不支給や支給決定の取消しにつながる可能性があります。こうした改正点は年度の途中でも変わることがあるため、申請時点で最新のパンフレット(詳細版)を確認するのが確実です。
そして最大の注意点が、事業展開等リスキリング支援コースは令和4〜8年度の期間限定で、2026年度が最終年度とされている点です。令和9年度以降の受付は現時点で予定されていません(延長の有無は今後の公表次第です)。計画届は訓練開始の1か月前までに出す必要があり、準備期間も考えると、このコースの活用を考えるなら早めに動くほど選択肢が広がります。
自社で申請するか、専門家・研修会社に任せるか
助成金の手続きは、書類の準備・要件の解釈・期限管理が絡み、片手間だと抜け漏れが起きやすい領域です。社内に労務や助成金に詳しい担当がいて、研修計画も明確なら自社申請でも十分に進められます。一方で、「どのコースが自社のAI研修に合うか判断が難しい」「計画書で業務との関連をどう書けばよいか分からない」という場合は、社会保険労務士や、助成金対応に慣れた研修会社・支援会社に相談した方が、結果的に採択の確度と手間の面で有利になることが多いです。
目安として、次のいずれかに当てはまるなら、専門家や支援会社への相談を検討する価値があります。「社内に助成金の申請経験者がいない」「複数コースのどれを使うべきか判断がつかない」「計画書で業務との関連をうまく言語化できない」「2026年改正で必要になった認定支援機関の確認など、新しい要件への対応に不安がある」——こうした状況では、外部の知見を借りたほうが不支給のリスクを下げられます。逆に、過去に同種の助成金を申請した経験があり、研修計画も明確なら、自社申請で十分に進められます。
判断に迷ったら、「AI研修で何を実現したいのか(目的)」を先に固めるのが近道です。目的が定まれば、使うべきコースも、計画書に書くべき内容も自然と決まってきます。どの研修サービスを選ぶかという観点は、AI研修おすすめ比較|選び方・費用・助成金の記事で詳しく解説しています。
PlanTiveでは、企業のAI活用支援の一環として、「自社の業務のどこにAIを使い、そのために誰へ何を教えるか」というAI研修の設計段階からご相談を承っています。助成金ありきではなく、事業に効く研修の中身を一緒に描いたうえで、活用できる制度があれば整理してご案内します。
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まとめ
AI研修は、内容と進め方が要件を満たせば、人材開発支援助成金の対象になり得ます。DX・新規事業に伴う研修なら事業展開等リスキリング支援コース(中小で経費75%)、職務に関わる一般的な研修なら人材育成支援コース、サブスク型ならば人への投資促進コースの定額制訓練、と目的に合わせてコースを選ぶのが第一歩です。
実務でカギになるのは、金額よりも「OFF-JTで10時間以上」「業務との関連を説明できる」「計画届を出してから始める」「記録を残して期限を守る」という基本の徹底です。加えて、事業展開等リスキリング支援コースは2026年度が最終年度とされているため、活用するなら早めの準備が欠かせません。数値や要件は年度で変わるので、申請前には必ず厚生労働省の最新資料と管轄の労働局で確認してください。まずは「自社のAI研修は何のためか」を言語化するところから始めてみましょう。
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よくある質問
▶ Q. AI研修は本当に助成金の対象になりますか?
▶ Q. どのコースを使えばいいですか?
▶ Q. 助成金はいくらもらえますか?
▶ Q. 従業員30人の会社は中小企業として申請できますか?
▶ Q. 個人事業主でも使えますか?
▶ Q. 申請で最も注意すべき点は何ですか?
▶ Q. 2026年度で制度は終わりますか?
監修・執筆
加地 勇大|株式会社PlanTive 代表取締役
新卒で鹿島建設に入社し施工管理・営業を経験後、Webマーケティング業界へ転職。採用領域の知見を積んだのち株式会社PlanTiveを設立。「採用は事業戦略の中核」をモットーに、マーケティング手法を活用した構造的な採用支援を行う。建設業×Webマーケという希少な経歴で、中小企業の採用課題を上流から解決。AI活用支援(企業のAI実装と人材育成)にも取り組む。
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